環境や人材に対する 長期的視野でのアプローチで、永続企業に不可欠な 強固な経営基盤を構築します。取締役 管理本部長 稲生 篤彦

人的資本の強化について

 人的資本の根本である社員は、300年続く企業を目指す当社グループにとって、かけがえのない仲間であります。社員に対して多様な価値観を受容しながらグループ一丸となってともに成長を図るためには、人材の採用と育成は欠かせない要素です。

 これに向けて2024年には、グループ各社の採用募集の一元化を進めることで、グループ会社との一体感を醸成するとともに、グループ一括採用による効率化も図ることができました。また、育成の観点では、「JESアカデミー」を設置したことで、グループ間の人材交流によって業務を通じた新たなスキル習得を支援したり、グループ間コミュニケーションの向上を図ったりすることが可能となりました。

 このような採用と育成に関する戦略策定や遂行については、2024年2月にグループ化したJES総合研究所のメンバーを中心として、当社の人材戦略機能を担う役割として10月に「グループ人材戦略室」を立ち上げました。2025年につきましても、「300年続く永続企業となるためには何が必要であるか」を役員・グループ人材戦略室を中心に協議しつつ、グループ会社が求めている状況も理解した上で、人材の採用と育成をさらに推進してまいります。

 一方現時点での課題としては、昨今の技術者の人材不足によって、思うような採用ができていないことが挙げられます。これに対しては、JESグループとしての魅力を高めていき、社員が「いきいき楽しく」働くことができる環境整備を構築していくことで解決につなげたいと考えています。

 将来的には、グループ会社の垣根を越えて人材の交流を図るためのプラットフォームを構築し、社員ひとりひとりが自分のキャリア実現や自分にあった仕事ができるような機会の提供を行うことができる仕組みを構築したいと考えています。そのため、グループ各社の就業規則等の整合を図り、さらにはグループ各社の統合等も視野に入れた検討も行うことで、社員ひとりひとりにとってより働きがいがある会社となるよう、様々な取り組みを着実に実行していきたいと考えています。

安全に対する取り組み

 当社グループの主要なセグメントであるファシリティ事業・環境事業・交通インフラ事業運営のいずれにおいても、安全はもっとも優先すべき事項です。安全を確保することができなければ、お客様や社員、さらには地域社会からの信用・信頼が損なわれてしまいます。

 現在のところ、安全に対する取り組みとしては、当社単体で安全衛生委員会を組成し、安全衛生に関する報告や情報共有を展開しており、グループ各社は個別に対応するという形になっています。今後の取り組みとして、グループ各社のノウハウを共有し、安全に関する意識向上や気づきを得る仕組みを構築してまいります。また、グループ全体としてBCP(業務継続計画)の整備・運用を進めて行くことも、喫緊の課題であると受け止めています。

資本コストと株価を意識した経営

 当社グループは2024年12月25日に適時開示情報として「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応に関するお知らせ」を開示し、資本コストと株価を意識した経営への取り組みを推進しています。

 まず、当社の現状につきましては、以下のように分析しています。資本収益性については、2024年9月期のROEは12.6%であり、8%と想定している当社の株主資本コストを上回る資本収益性を達成していると考えています。市場評価については、2024年9月期のPBRは2.3倍、PERは19.5倍となりました。その主たる要因は、2024年1月に株主優待制度の導入を発表した結果、株式市場から一定の評価を得られた点にあると分析しています。財務状況については、2024年9月期のWACC(加重平均資本コスト)は5%程度、D/Eレシオ(有利子負債/自己資本)は0.35倍であり財務安定性は確保されていると考えています。

 今後の取り組み方針と目標としては、M&Aや人材の採用、育成等、積極的な成長投資を行うことが重要であり、それと並行して安定的な株主還元を行うことを進めていきます。

 キャッシュアロケーションについては、賃貸ビルの建替えによる設備投資の資金調達として長期借入を実行しています。これにより財務面における有利子負債が増加することになります。これに対して昨今の金利情勢も勘案し、D/Eレシオにも留意しつつ、財務レバレッジを活かした経営を進めていきます。当社グループでは、資金効率化の観点から、CMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入しています。CMS導入によってグループ全体の資金を一元管理することが可能となり、グループ各社の資金を集約し、必要な資金を必要な時にグループ内で融資することが可能となり、有利子負債軽減を図ることができます。

 最後に、株主優待や配当などの株主還元についてご説明します。株主還元策は先ほどの株価を意識した経営に関連する項目であり、当社として重要な施策であると考えています。株主優待については、今後も継続していく方針であり、株主の皆様への株主還元の一施策として考えています。配当につきましては、2025年9月期は1株あたり年間52円(内訳:3月末26円、9月末26円)を配当予想として適時開示している通り、増配を予定しています(株式分割前の基準)。